役員退職金を支給する際の注意事項は?
税務上、役員退職金が否認されてしまうと、
- 法人税では損金算入できない、
- 源泉徴収税額も全然違うため徴収漏れになってしまい、ダブルパンチを受けてしまいます…
(退職所得は分離課税です。なおかつ、退職所得は、退職金の金額から退職所得控除を控除した後の金額に1/2を乗じた金額ですので、給与所得と比べて税額計算上はかなり有利です。)
注意事項は以下です。
【注意事項①】
損金算入時期ですが、「原則として株主総会等の決議により支給額が確定した日の属する事業年度」です。
例外もありますが、原則は株主総会等の決議です。
これは、支給した後に形式的に株主総会を開催した、つまり株主総会前に退職金を支給してしまうと否認されるリスクがありますので要注意です。
【注意事項②】
退職金について、「不相当に高額とされる部分の金額については損金の額に算入されません。」とありますが、この「不相当に高額」とはなんでしょうか?
よく言われるのは「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」で社長の功績倍率は3倍が一般的。
しかし、この3倍についても否定されているケースもあります。
【注意事項③】
役員等の勤続年数が5年以下の場合は、退職所得の計算における優遇(退職金の金額から退職所得控除を控除した後の金額に1/2を乗じない…)がありませんので注意が必要です。
この勤続年数は役員としての勤続年数ですので、役員になる前の期間はカウントされません。
【注意事項④】
代表取締役を退任して会長になる場合も注意が必要です。
退任後も経営上重要な地位を占めている場合は、そもそも実質的には「退職」でないと退職金を否認されてしまう場合があります。
形式的に「常勤役員から非常勤役員へ」「報酬も半分以下」としたとしても、実質的に取締役会や経営会議などの会社の意思決定機関を主宰し、従前と変わらず稟議書などによる決済手続きに深く関与している場合は、会社の経営上の重要な地位から退いたことにはなりません。
これは親族内承継による事業承継の際に、注意が必要です。